要旨
私たちは県内各地でホエールウォッチング業を営んでいる業界団体で、研究者と連携して科学的根拠を基に自主ルールを制定し、自然に配慮した持続可能な観光産業発展のため、30年以上前からザトウクジラの保護と観光利用の両立に取り組み、冬場の沖縄観光に寄与してきたが、今年11月から那覇市-本部町及び那覇市-久米島町において就航が予定されている超高速船ジェットフォイルに関して、鯨類との衝突に起因する安全な船舶の航行や地域観光産業、航路周辺生態系への影響に強い懸念を抱いている。
沖縄近海は、毎年12月から翌年4月にかけて北の海から帰ってきたザトウクジラが相手を見つけ、子を産み育てる日本国内でも貴重な繁殖海域で、子鯨は泳ぎや潜水が未熟なため、親子鯨が海面近くで浮いて休息している姿が多く見られる。超高速船ジェットフォイルは、船体が完全に水面から浮き上がる「翼走状態」で船速43ノット(時速80キロメートル)もの高速で航行するため、鯨が船の接近に気づきにくく、国内だけでも過去数十件を超える鯨類との衝突事故が起きており、乗客の死亡例や100名以上が重軽傷を負った例もある。衝突事故が起これば、沖縄観光のイメージダウンや冬場の貴重な観光資源となっているザトウクジラの生態系へも深刻な悪影響を与える。
そのため、運航会社の久米島オーシャンジェット株式会社と複数回にわたって協議を続け、今年4月には4協会で安全対策の申入れを行った。それに対して、同社は記者会見において「クジラ衝突防止対策案」を発表した。対策案は、航路の一部を変更し、ザトウクジラの密集海域である水深200メートル以浅を可能な限り避けるなど、非常に評価できるものである。ただし、那覇港や本部港周辺における課題が残っていることと対策案が確実にきちんと実施され、より安全性の高いものとなるように、現在も協議を続けている状況である。
ついては、超高速船ジェットフォイルの就航が鯨との衝突がない安全なものとなり、沖縄観光の新たな魅力となるよう、下記事項について配慮してもらいたい。
記
1 超高速船ジェットフォイルの就航に関し、何らかの許可を出す場合には「クジラ衝突防止対策」が必ず実施されるよう条件を付すとともに、実施されていることが確認できるよう、航行記録の報告などを義務づけること。
2 より現実的かつ安全の確保に効果的な対応策の構築に向けて、沖縄県、国土交通省、環境省、久米島オーシャンジェット株式会社、県内ホエールウォッチング協会、地元鯨類研究者等で協議できる場を設けること。 |