陳情文書表

受理番号第161号 付託委員会土木環境委員会
受理年月日令和6年9月18日 付託年月日令和6年10月8日
件名 与那国島の樽舞湿原の調査と保全を求める陳情
提出者*********
要旨

 琉球列島は対中国の国境の島々と位置づけられ、馬毛島、奄美大島、沖縄島、宮古島、石垣島、与那国島そして北大東島と急激な軍事要塞化が進められている。その一環として、与那国島の樽舞湿原において、湿原のほぼ全域を掘削する特定利用空港・港湾建設計画(新港湾計画)がある。
 与那国島に降る年平均2500ミリメートルもの豊かな雨は不透水盆(八重山層群)にためられ、断層の切れ目から井戸、湧水、川となってあふれ出て、水田や樽舞湿原のような豊かな湿地をつくり上げてきた。この水環境こそ与那国の生物多様性を生み出した大きな要因であり、樽舞湿原という琉球列島最大の湿原が与那国島に形成されたゆえんでもある。さらに、この樽舞湿原は特異な断層運動によりできた谷底低地である。環境省は、淡水性の藻類をはじめ水生生物の生息地及び他の動植物の生息・生育場所として重要であることから、樽舞湿原を湿地500選の一つに選定した。ここには沖縄県を分布の北限とするミズガンピや、国内唯一のヤワラケガキなどの植物種が分布しており、これらをはじめとする植生の豊かさは多くの水生・半水生の動植物の生息場所として高く評価されている。また、昆虫では与那国固有種や絶滅危惧種としてアオナガイトトンボ、エサキタイコウチ、ヨナグニアシナガドロムシなどが分布しており、野鳥に関しては国内希少野生動植物種のヨナクニカラスバトやキンバト、クロツラヘラサギ、アカヒゲなどの生息や飛来も確認されており、烏獣保護区にも指定された。また、日本固有亜種であるヨナグニシュウダやミヤラヘビ、ヨナグニキノボリトカゲなど爬虫類や両生類の生息地としても慎重に保全されるべき地域であり、指定された動植物だけでなく、多くが未調査のままである淡水性の貝類や魚類、そのほか多数の未記録の動植物が生息・生存している。
 防衛省が与那国島に陸上自衛隊のレーダー基地と駐屯地を造ろうとした際、日本の昆虫5学会、日本分類学会連合(日本の分類学に関する25学会全て)が、防衛省、環境省、沖縄県知事、与那国町長宛てに与那国島の環境の保全を要望した。これまで日本の分類学に関する全学会が、連名でこのような要望書を出したことはなく、与那国島の生態的環境の特性と生物種の固有性、そしてその研究・調査の必要性を多くの研究者が深く認識している。加えて、新港湾計画地入り口の比川の沖には、サンゴ礁特有の地形のリーフトンネルも発見されているが、そのサンゴ礁が影響を受けることは明らかである。湿地には自然防災、緩衝材機能などもあり、生き物だけでなく、人間生活への影響も多大だと考えられる。
 ついては、下記事項につき配慮してもらいたい。
                 

1 樽舞湿原とその周辺は、環境省の重要湿地500選の一つであり、同時に鳥獣保護区の指定も受けていることから、保全に努めること。
2 樽舞湿原は渡り鳥ほか動植物の宝庫となっているが、いまだ詳細な調査はされていない。専門家を交え、鳥類や水生昆虫、淡水性貝類、亜熱帯低湿地の植物などについての分類学的調査を早急に進めること。
3 比川沖のリーフトンネルの現状についての専門家の調査を早急に行うこと。