陳情文書表

受理番号第38号の5 付託委員会経済労働委員会
受理年月日令和2年3月30日 付託年月日令和2年7月14日
件名 新型コロナウイルス感染症の影響による経済危機に関する陳情
提出者沖縄県ホテル旅館生活衛生同業組合
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要旨


 沖縄県の観光産業は、昭和47年度の56万人から令和元年(暦年)の入域観光客数は1016万3900人と推移し、県内への経済波及効果も1兆1700億円の産業へと成長した。今後もおおむね順調に推移する計画であったが、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大のため、沖縄県から離発着する国際線の飛行機は全て運航停止、国内も減便され、ホテルの予約数も2月以降急激にキャンセルが相次ぎ、稼働率も60%から70%減と過去に類を見ない長期的な影響を受ける状況が続いている。
 地元資本の中小零細企業ではこの状況があと数週間続けば従業員の雇用確保が難しくなる。また、先の見えない現状ではたとえ経営支援の特別融資があるにしても返済の希望が持てず資金調達がちゅうちょされ、客室稼働を上げるための大手資本の低価格販売競争により、ますます体力を奪われる状況となっている。 
 また、他地域からの誘客が望めない中、県民による施設の利用促進や地元の食材利用促進などの会合・イベントを積極的に開催し、希望の持てる環境づくりを沖縄観光経済への支援とともにぜひ行っていただきたい。
 ついては、下記事項につき配慮してもらいたい。
                 

1 宿泊業界は他産業と違い、終息宣言がなされたとしても半年遅れて景気浮揚となる業種であり、広大な土地と大きな施設を所有していることから固定資産税は多大な負担となっている。そのため、最低でも1年間の減免措置や事業所税等の納付期間の延長及び一定期間の減免措置を行うこと。
2 経営支援策について
(1)雇用調整助成金において、中小企業では3分の2は国の助成金で賄えるが、3分の1は各社負担であり、売上げが激減している中、3分の1ですら払えない企業のため、助成金を5分の4に引き上げるよう国に対して働きかけるか、その3分の1相当額を県予算で上乗せ助成すること。
(2)衛生環境激変特別貸付やセーフティーネット保証をはじめとする支援策が打ち出され既にその借入れを申請し始める施設も出ているが、要件対象外の施設などへの対策増強などさらなる支援を行うこと。
(3)県下の各金融機関に対しても、積極的な緊急運転資金融資の実施要請、既存債務について鎮静化まで一定期間の返済猶予(当該期間の無利息化等を含む)及びリスケジュールの指示を行うこと。
(4)保証協会の保証料無料化及び地元金融機関へのさらなる返済条件の緩和や融資拡大を行うこと。
(5)政府系金融機関からの別枠貸付(無利子・無担保)の返済条件の緩和、融資手続の速やかな対応及び必要書類の簡素化、政府系・民間系を問わず、金融機関における返済猶予及び金利の減免等、柔軟な対応を行うこと(1年程度)。
(6)迅速に手続を完了できるよう申請書類及び必要添付書類の簡素化もしくは申請業務の代理申請の窓口を設置すること。
(7)3月及び4月の売上げが激減し、5月以降の予約も今までのように入らない中、当面の資金繰りが心配となることから、前年比20%以上、売上げが減少した事業所に対し、消費税の納付期間を延長すること。
(8)社会保険料の企業負担分について、20%以上売上げが減少した事業所は6か月間減免、40%以上売上げが減少した事業所は1年間減免すること。
(9)NHK放送受信料や音楽著作権使用料などは施設に対しての課金となることから、稼働率が激減する中、従来の課金100%で一括払いの状況では困難な状況が考えられる。租税や公共料金等について、一部免除、減免または納付期限の延長等の緊急処置を行うこと。
(10)2020年度10月に改定を予定している最低賃金については、経済状態がこのまま回復しないことを想定すると経営を圧迫するおそれがあるため、据置きとすること。
3 安全・安心の確保について
(1)新型コロナウイルス感染者が発生した場合、風評被害による経営への打撃は避けられないが、ガイドラインに沿った迅速な対応により現状を維持することは可能である。そこで、各タイミングにおいて感染者の発生に係る経緯を確認することで感染の拡散を防止し、それ以降の受入体制に迅速な対応ができるようガイドライン作成に関する予算措置と情報発信の支援を行うこと。
(2)拡散防止のための衛生管理には、体温計(非接触型が望ましい)・マスク・消毒用アルコールの確保が必須となる。現状では海外との物流が困難なため、十分な数の確保が難しい状況であるものの、物流が正常化されたときに上記物資の確保と配布を行うこと。

採択された請願・陳情の処理経過及び結果について(報告)

報告を求めた者知事
報告内容

(処理経過及び結果)
1の(1)について
 雇用調整助成金の特例措置については、新型コロナウイルス感染症の影響等を踏まえ、助成率や上限額の引き上げ、要件の緩和、手続の簡素化など、制度の拡充が行われるとともに、累次にわたって同特例措置の延長が行われております。
 令和3年5月以降については、原則的な措置の助成内容を縮小する一方で、緊急事態宣言等の対象地域や特に業況が厳しい事業主については、助成率を最大10分の10とするなどの特例を設け、同年11月末まで継続する予定であるとされております。
 県においては、雇用の維持を図るため、雇用調整助成金の活用を促進するとともに、特例措置の延長等について国に要請を行うほか、令和2年7月から県独自の上乗せ助成を実施しているところであり、引き続き、感染状況や雇用情勢への影響等を踏まえつつ、適切に対応してまいります。

1の(2)から(6)について
 県では、新型コロナウイルス感染症の影響で売上高等が減少した中小企業者を対象に、令和2年2月に「中小企業セーフティネット資金」の融資を開始した他、同年5月から、3年間実質無利子等の「新型コロナウイルス感染症対応資金」を創設し、金融機関によるワンストップ手続きや融資限度額の拡充など取り組んでまいりました。
 令和3年度から、事業者が金融機関の伴走支援を受けながら経営改善に取り組む「新型コロナウイルス感染症対応伴走型支援資金」を創設し、融資条件を最大3年間実質無利子、保証料ゼロとする県独自の支援策を講じるなど、事業者負担の軽減を図っております。
 また、県では、県内金融機関に対し、既存融資の返済猶予等の条件変更など、迅速かつ柔軟な対応を求めてまいりました。
 県としては、引き続き、円滑な資金繰りを支援し、中小企業者の事業の継続に繋げていきたいと考えております。

1の(7)について
 新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、我が国経済に多大な影響が生じていることから、令和2年4月に「徴収猶予の特例制度」が創設され、多くの納税者について納付を猶予しております。
 当該特例制度の適用期限以降の対応においては、総務省通知に基づき、既存の猶予制度を柔軟かつ適切に運用することにより、引き続き、納税が困難な納税者に配慮した制度運営を図ってまいります。
 この猶予制度は、県税に限らず、消費税を含む国税及び市町村税にも同様に適用されることとなっております。
 県としましては、引き続き同制度の広報を継続的に行い、猶予の相談があった際には適切に対応してまいります。

1の(8)及び(9)について
 新型コロナウイルス感染症の影響を受けた事業者等の社会保険料については、事業等に係る収入が前年同期に比べ概ね20%以上の減少があり、一時に納付を行うことが困難な事業主を対象に、一年間厚生年金保険料等の納付を猶予する特例制度が国において実施されておりました。
 NHK放送受信料につきましては、国の持続化給付金の給付決定を受けた事業者等に対し、事業所の受信料を2ヶ月間免除する措置が講じられていました。
 音楽著作権使用料については、従来「管理著作権物の利用できない期間が1ヶ月間を超えて継続的に不能の状態」であることが減免の条件となっておりましたが、新型コロナウイルス感染症の影響に伴い、利用できない期間が1ヶ月未満であっても利用期間に応じて減免が可能となる条件緩和が行われております。
 また、国税、県税及び市税等については、令和2年4月に「徴収猶予の特例制度」が創設され、多くの納税者について納付を猶予しております。当該特例制度の適用期限以降の対応においては、総務省通知に基づき、既存の猶予制度を柔軟かつ適切に運用することにより、引き続き、納税が困難な納税者に配慮した制度運営を図ってまいります。
 電気、ガス及び水道等の公共料金の各事業者におきましては、料金の支払いが困難な需要者に対して、支払期日を延長する等の柔軟な対応を行っております。
 県としましては、新型コロナウイルス感染症に伴う各種減免措置等について積極的に情報収集し、商工会・商工会議所等の経営相談窓口を通じて、情報提供・活用促進に取り組んでまいります。

1の(10)について
 最低賃金の決定については、国の中央最低賃金審議会から、各都道府県ごとに適用される地域別最低賃金額改定の目安が提示され、各都道府県労働局長は、当該目安を参考にしつつ、公益、労働者、使用者を代表する同数の委員で構成する最低賃金審議会に調査審議を求め、その意見を聴いて決定しております。
 令和2年度の地域別最低賃金額については、中央最低賃金審議会において、新型コロナウイルス感染症拡大による現下の経済・雇用への影響等を踏まえ、改定額の目安を示すことは困難とし、現行水準を維持することが適当としつつ、都市部と地方の地域間格差を縮小することにも配慮するよう答申されたところです。
 その答申を踏まえ、沖縄地方最低賃金審議会では、令和2年8月に前年度から2円引き上げの
792円と決定され、同年10月3日から発効されたところであります。

2の(1)について
 県では、令和2年5月4日付け、内閣官房新型コロナ感染症対策推進室長の緊急事態措置の維持及び緩和等に関しての文書を受けて、令和2年6月11日に県内事業者及び関連団体に対し、ガイドラインの作成を依頼したところであります。今後とも、ガイドラインの遵守を確認するとともに、感染症拡大防止に努めてまいります。

2の(2)について
 県では、令和2年度に県内の中小企業者等の新型コロナウイルス感染症拡大防止対策を奨励するため、「うちなーんちゅ応援プロジェクト」等の支援対象となっていない事業者等のうち、感染症拡大防止対策に取り組む中小企業者等に対し、1事業者あたり一律10万円の奨励金を給付する「安全・安心な島づくり応援プロジェクト」を実施しました。本事業を通して、宿泊業をはじめとした対象事業者の、感染症拡大防止に資する体温計・マスク・消毒用アルコール等の物資の確保を支援したところです。
 また、令和3年度においては、観光庁の地域観光事業支援費補助金を活用した「宿泊事業者感染症対策支援事業 」により、宿泊事業者において実施する感染拡大防止策の強化、事業継続に向けた前向き投資に対し、支援を行います。