要旨
私どもの息子は、2017年中学3年時から普通高校進学を希望し受検を続けてきたが、今年も定員内での不合格により高校で学ぶ機会を得ることができなかった。
現在、中学卒業者の98%は高校に進学しており、高校はほぼ全入の時代である。私たちは息子が普通高校を受検した年から県や県教育委員会に対し、定員が満たされていない場合は生徒の進学したい意思を尊重し、本人の可能性を広げるためにも、平成9年文科省通知にある「評価尺度の多元化」を図るよう求めてきた。
そして県教育委員会は、今年7月の第11回教育委員会会議において、「県立高等学校における障害のある人もない人も共に学ぶ新たな仕組みづくりの取組について」、障害のある生徒と障害のない生徒が共に学ぶ仕組みと一人一人の教育的ニーズに応じた学びを保障するための調査研究を行うため、知的障害の程度が中度・重度である生徒を対象に県立高校に「学びの教室(仮称)」を来年度から設置すると報告した。しかし、運営について現時点で具体的な見通しが持てるような説明がなく、入学できたとしても学校内で孤立してしまうことへの懸念がある。
ついては、「学びの教室(仮称)」がよりよいインクルーシブ教育の構築につながるよう下記事項につき配慮してもらいたい。
記
1 現時点で公表されている「学びの教室(仮称)」構想について、主に以下の2点の懸念があることから、障害のある生徒が設置校の生徒の一人として共に学ぶ仕組みを教育庁内の担当者だけで検討するのではなく、ワーキングチームの検討会議の中に継続して障害の当事者並びに保護者、学識者、教職員、福祉関係者等が参加できる場を設けること。
(1)入学許可となった者は県立特別支援学校籍であることについて
学校籍が別であるということで、設置校の職員生徒が共に学ぶ仲間としてではなく、障害のある生徒を「部外者」「お客様」など異質な存在として扱うことで、同じ学校の仲間としての一体感が持てないことへの懸念がある。「学びの教室(仮称)」は調査研究という形でスタートするので、学校籍についても検討課題の一つとして調査研究を行うこと。
(2)可能な範囲で設置校の授業を同一の空間で受けることについて
担当教員の考え方次第で、障害のある生徒が別室で過ごすことが多くなり、行事だけ連携学級に参加する形になることで、より「部外者」的な意識が強まり、本人も疎外感から教室に入ることも難しくなることへの懸念がある。居場所の拠点を連携学級に置き、日頃から様々な場面で設置校の生徒の一人として扱い、本人や周りの教師生徒が一緒にいることに対し違和感を持たないための取組を行うこと。
2 原則、国の教育制度は、義務教育の段階から障害の程度によって就学先が分けられてしまい、多くの教員生徒は障害のある人とともに学ぶ場を経験していない。「障害のある生徒もない生徒も共に学ぶ仕組みづくり」の一環として、障害があってもなくても互いが対等な人間であるという人権意識を育て、その観点から障害理解に努めることができるよう、設置校の教員生徒に研修や学習の機会を確保すること。
3 障害のある生徒の学校生活においては、担当教員だけでサポートを行うのは難しいと考えられる。本人が必要とする場面で適切な配慮を行うための同性の介助者を配置すること。 |