平成20年(2008年) 第 2回 沖縄県議会(定例会)
第 2号 7月 3日
警察本部長(得津八郎)
 

 米軍の警察権が基地の外における米軍人・軍属による事件・事故に及ぶ範囲についてお答えいたします。
 米軍は、基地内においては秩序及び安全の維持を確保するため、すべての適当な措置をとることができますが、基地の外においては日米地位協定により、日本側との取り決めに従い日本国の警察当局と連絡して警察権を行使することとなっております。
 例えば、米軍に第一次裁判権が認められている米軍人または軍属を被疑者とし、軍人・軍属及びそれらの家族を被害者とするいわゆる「もっぱら事件」や、公務中の交通犯罪等については、基地内で発生した場合は米軍独自で日本警察の関与することなく、警察権に基づき逮捕など必要な捜査を行うことができますが、基地の外で発生した場合においては、米軍に第一次裁判権がある事件であっても地元日本警察に連絡するなど必要な措置をとることが求められております。
 次に、基地の外での事件について、被疑者が軍人か軍属かで身柄取り扱いが異なるかについてお答えいたします。
 被疑者が軍人であるか軍属であるかその身分の違いにより、身柄の取り扱いが異なることはございません。
 なお、先ほど申し上げましたように、被疑者、被害者ともに米軍関係者であるいわゆる「もっぱら事件」や「公務中の交通犯罪等」については米軍側に第一次裁判権がありますが、軍人または軍属が被疑者でも「被害者が日本人や一般外国人の場合」、あるいは「公務外の犯罪」については、日本側に第一次裁判権があります。
 したがいまして、第一次裁判権が日本側にある事件の場合、被疑者の逮捕の必要性の判断については日本警察において行い、逮捕するなどして身柄を拘束した上で所要の捜査を行うことになります。
 ただ、日本警察が逮捕の必要性があると判断しても被疑者が基地内にいる場合は、日米地位協定により原則として起訴前の身柄拘束は米軍当局にゆだねられることになっており、日本警察で米軍関係者の身柄の拘束は困難な状況であります。
 次に、米軍人・軍属が事件を起こした場合の逮捕の優先権について、米軍・日本警察のどちらにあるのかについてお答えいたします。
 米軍人・軍属による事件が基地の外で発生した場合、日本警察において逮捕の必要性があると判断した場合は、裁判所へ逮捕状の請求をするなど所要の手続を踏み、被疑者を逮捕しております。
 ただし、米軍憲兵隊と日本警察の双方が法律違反の行われた現場にある場合には、地位協定上の共同逮捕となる場合があり、日本警察の存在にもかかわらず、身柄の拘束は米軍憲兵隊が行い日本警察が行うことはできない取り決めとなっております。
 次に、東京秋葉原の歩行者天国で発生したいわゆる無差別殺傷事件に対する県警察としての認識と同種犯罪の防止対策について一括してお答えいたします。
 今回の事件につきましては、大変痛ましい事件であり、改めて亡くなられた7名の御冥福と、10名の負傷された方々の一日も早い御回復をお祈り申し上げたいと思います。
 現在、警視庁において、被疑者の経歴、本件犯行に至る動機、インターネット利用による犯行予告と思われる内容、凶器の入手経路など、全容解明に努めていると承知しております。
 現時点では事件の全容は明らかになっておりませんが、今後、解明され次第、必要とされる対策を講じていくこととしております。
 当面、県警察としては、次の対策を実施しているところであります。
 第1は、多数の県民や観光客が集まる繁華街等における街頭活動の強化であります。
 本件は、不特定多数の者を短時間で殺傷するといった特徴があることから、類似事案の発生を防止するため、6月10日付で県下14警察署へ通達を発出し、警戒を強化したところであります。
 各警察署にあっては、日曜日に歩行者天国を実施している那覇市の国際通りを初め、空港、大型ショッピングセンター、祭り・各種イベント会場等、県民や観光客が多数集まる場所を重点的に地域警察官によるパトロールや駐留警戒を強化しております。
 第2は、本件の被疑者は、事前に携帯電話のサイトに犯行予告の書き込みをしていたとのことから、県警察では従来から実施しているサイバーパトロールを強化しているところであります。
 また、インターネットに関して豊富な経験と知識を有するボランティアで構成する「サイバーパトロールサポーター」とも連携し、インターネット上の犯罪に関係すると思われる情報の把握に努めるとともに、6月12日には県内のインターネット関連業者19社に対して、インターネット上で犯行予告と思われる情報を認知した場合の通報を依頼したところであります。
 第3は、秋葉原での事件で使用されたダガーナイフ対策についてであります。
 現行の法制(銃砲刀剣類所持等取締法)では、ダガーナイフの販売が規制されているわけではなく、その販売、購入実態についても把握されてない状況にありました。そのため県警察では、本年6月26日付で各警察署に通達を発出し、管内の刃物販売業者の実態把握とあわせて、ダガーナイフの販売の自粛、販売する際の身分確認、記録の保存、大量に刃物を購入した者など不審者情報の警察への通報などの要請を行っているところであります。
 以上の対策を講じているところでありますが、県警察といたしましては、今後ともこの種刃物を利用した殺傷事件が沖縄県内で発生することのないよう、必要とされるあらゆる対策を講じてまいる所存であります。
 次に、本県における犯罪の低年齢化の状況と学校や地域との連携等についてお答えいたします。 
 本年5月末現在の窃盗、傷害等の刑法犯で検挙・補導されたいわゆる刑法犯少年は637人で、前年同期に比べ139人、17.9%減少しております。しかしながら、成人を含めた刑法犯検挙人員の総数に占める少年の割合は41.2%と全国で4番目に多く、少年犯罪が県内治安に大きな影響を与えております。
 刑法犯少年の学職別内訳を見てみますと、中学生が401人で最も多く、刑法犯少年全体に占める構成比は63%で、全国平均41.4%の約1.5倍と全国一高い比率となっており、小学生も55人で構成比は8.6%と全国平均4.3%の約2倍と低年齢化が顕著であります。
 県警察におきましては、少年非行の低年齢化に歯どめをかけるため、学校、地域、関係機関等と連携し、児童生徒の規範意識の高揚を図るための非行防止教室の開催、非行実態の情報発信と啓発活動、少年警察ボランティアと連携した夜間の街頭補導活動等を強化しているところであります。
 さらに、本県の少年非行は刑法犯少年に占める中学生の比率が最も高いことに加え、同じ中学校出身者による共犯事件が多いという実態に着目し、昨年4月から各警察署管内の一定の中学校区を指定した上、警察、学校、地域、関係機関が連携して、指定中学校区の非行実態に応じた非行防止教室の継続開催、非行集団の検挙・解体活動、少年の居場所づくり、立ち直り支援活動などを一定期間集中的に行うスクールエリア対策を推進しているところであります。
 次に、児童生徒の深夜徘回の実態と防止対策についてお答えします。
 本年5月末現在、不良行為で補導された少年は1万3893人であり、そのうち深夜徘回は7738人、55.7%で、前年同期に比べて71人、0.9%増加しております。ちなみに、昨年の深夜徘回による補導は1万9518人で不良行為全体の53%を占めており、少年人口1000人当たりの全国平均の1.7倍で全国5位という状況にあります。
 深夜徘回を助長する要因の一つとして、本県においては大人が深夜に子供を伴って買い物などをしている光景が見受けられることや、深夜徘回で補導された少年の大半が周囲の大人から注意されたことがないと答えており、保護者を含む大人が無関心であることが考えられます。
 非行の入り口になりやすい少年の深夜徘回を防止するためには、少年自身の規範意識の高揚を図るとともに、大人が少年の健全育成に関心を持ち、少年を取り巻く社会環境の改善を図っていくことが重要であると考えております。
 県警察におきましては、地域ボランティアと連携した夜間街頭補導活動を強化しているほか、地域住民による子供たちへの注意指導、家庭での子供の在宅確認の徹底について県民に対して広報啓発活動を行うとともに、関係団体に対しても必要な情報を発信し、協力要請を行っているところであります。
 今後とも家庭、学校、地域、関係団体と連携し、少年の規範意識の高揚と少年の非行を防止する社会の構築を積極的に推進してまいる所存であります。
 以上でございます。

 
20080202070030