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平成12年(2000年) 第 1回 沖縄県議会(定例会)
第 9号 3月30日
伊波 洋一
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結の会を代表し、陳情平成11年第146号沖縄県の外郭団体などあらゆる県の機関から「一坪反戦地主など」を役員から排除することを求める陳情の採択に反対する立場で討論を行います。
本議会においては、一般的に請願と陳情の採択に当たっては全会一致を原則としており、今議会においても本件だけが採決による採択であることから、本陳情は与党諸君にとって異例な取り扱いがなされております。総務企画委員会において十分な審議が尽くされないままに採決で採択されたことで本会議に回ってまいりました。
私は、県議会の使命は、県民の声を酌み取りながら議会で論戦を通して県政に反映することであると考えております。一部の者の意見を数の力で押し切って県政に反映しようとすることは、県民の信頼を裏切ることになるだけでなく大きな非難を受けることは明らかであります。ましてや本陳情のように、一坪反戦地主及び一坪反戦地主であった者を県の外郭団体などあらゆる県の機関から排除することを求める陳情を採択することは、日本国憲法の多くの条文に反することは明らかであり許されることではありません。
さて、陳情はどのような趣旨で一坪反戦地主及び反戦地主であった者を公職から排除しようとしているのか、陳情書によって明らかにしていきたいと思います。
陳情書の中で、1、「一坪反戦地主の土地所有の目的は、土地を経済的に使用するためのものではなく、国の政策を妨害するためのものであるから憲法第12条違反である。」と書かれております。
憲法第12条は、「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。」となっているが、この条文のどこに違反しているのか疑問であります。違反していないことは明白でありますし、むしろこの陳情を県議会が採択することこそこの条文に違反するものであります。
次に、同陳情は、2に、「「反戦平和」とは、米軍を日本から追い出し、自衛隊をなくして日本を無防備にしてから、民衆に暴動を起こさせ、日本を破滅に陥れようとする考えと同じである。」と続けております。
太平洋戦争で最大規模の戦闘が続いた沖縄戦で20数万人の戦死者を出し、10数万人にも及ぶ沖縄県民の戦死者の多くが非戦闘員であった沖縄県民が悲惨な沖縄戦の体験をもとにして戦争に反対し、平和を願うことは、民衆に暴動を起こさせ、日本を破滅に陥れようとする考えと同じなのか。全く逆であり、戦前日本軍が各地を侵略し、最終的には国民を破滅させ、国を破滅させたのではなかったのでしょうか。
沖縄県民が戦争を憎み、平和を求める願いは、昨日オープン式典を行った新沖縄県平和祈念資料館の設立理念にも次のように述べられております。「沖縄戦の何よりの特徴は、軍人よりも一般住民の戦死者がはるかに上まわっていることになり、」、「ある者は飢えとマラリアに倒れ、また敗走する自国軍隊の犠牲にされる者もありました。私達沖縄県民は想像を絶する極限状態の中で戦争の不条理と残酷さを身を以って体験しました。 この戦争の体験こそ、とりもなおさず戦後沖縄の人々が米国の軍事支配の重圧に抗しつつ、つちかってきた沖縄のこころの原点であります。 “沖縄のこころ”とは人間の尊厳を何よりも重く見て、戦争につながる一切の行為を否定し、平和を求め、人間性の発露である文化をこよなく愛する心であります。」。すなわち反戦平和は、沖縄の心そのものであって、本陳情の言う「民衆に暴動を起こさせ、日本を破滅に陥れようとする考え」ではないのであります。
陳情書は続いて、4番目に、「平和祈念資料館監修委員、県公文書館役員、県教育委員などは、特に歴史の公正を期する立場から「一坪反戦地主」のような人物は不適格者である。」とし、5に、「県内には、正しい歴史観を持つ有識者は豊富である。このような人たちを差しおいて、保守県政のリコールを企てたり、少なくとも県政を危うくし、県民の恥となるような行動、言動を繰り返して、恬として恥じない「一坪反戦地主」などを有用し、県民の税金をむだ遣いすべきではない。」、「以上のようなことから、県から給与、運営資金など何らかの資金のかかわり合いのある外郭団体においては、一坪反戦地主や過去にその団体の一員であった者は役員から即刻排除するよう配慮してもらいたい。」と結んでいるのであります。
陳情者たちがどのように考えようとも自由ではあります。なぜならば、人間個々の内心の自由は人権のうちでも優越的地位を有しており、具体的には思想、良心の自由を保障するために思想及び良心の自由(第19条)、さらに信教の自由(第20条)、集会・結社・表現の自由(第21条)、学問の自由(第23条)を日本国憲法はすべての国民の基本的人権として保障しているのであります。
憲法第19条は、「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。」と定め、憲法第21条は、「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。②検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。」。憲法第23条は、「学問の自由は、これを保障する。」とし、これらの条文は除外規定なしにその自由を保障しているのであり、国民が一坪反戦地主になることを憲法は保障しているのであります。
また、憲法第22条は、「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。②、何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。」、このように定めております。
公共の福祉に反するとは、例えば法が禁止する管理売春や国家試験で医師免許を持つ者以外に医療行為を規制することであり、医師以外の者の行為が人の健康に害を及ぼすおそれがあるからであります。
陳情書の求めることは、一坪反戦地主を県のあらゆる公職から追放することを求めるものであり、県から給与、運営資金など何らかの資金のかかわり合いのある外郭とはすべての福祉施設、認可保育所、作業所なども含むことになるのであります。
総務企画委員会では、採決で本陳情を採択して本会議に送ってきたわけでありますが、一坪反戦地主とは陳情書に言うようにそれほど県の公職から遠ざけなければならない存在なのでありましょうか。県議会がこのような陳情を採択することは、県議会の名誉を汚すだけでなく、一坪反戦地主会の名誉を著しく傷つける暴挙であります。総務企画委員会でこの陳情を採択した諸君は、一坪反戦地主会や一坪反戦地主を知っていて採択したのでしょうか、極めて疑問であります。
例えば私は、一坪反戦地主会に参加する一坪反戦地主で、宜野湾市の有権者の信任を得た県議会議員であります。
例えば本県から選出されている2人の参議院議員島袋宗康参議院議員と照屋寛徳参議院議員は一坪反戦地主であります。島袋宗康参議院議員は社会大衆党委員長でもあり、県政を支える公党の代表者であります。照屋寛徳参議院議員は、弁護士としても活躍しております。お2人は、投票した全県民の過半数以上の信任を得た国会議員であります。このお2人の国会議員がもし県の外郭団体の役員を兼ねているのなら、即刻排除しようというのでしょうか。
さらに、市町村長にも一坪反戦地主はいるのであります。例えば名護市の岸本建男市長も一坪反戦地主であります。彼も県の外郭団体の役員に名を連ねてはならないということになります。陳情の趣旨は、県民や市民を侮辱することになることは明らかであります。
与党の県議会議員に一坪反戦地主会を理解していない方がいるかもしれないので一坪反戦地主会について述べます。
一坪反戦地主会は、代表世話人が6名おります。例えば元沖縄大学学長で現在沖大教授の新崎盛暉さんであります。弁護士の金城睦さん、池宮城紀夫さん、三宅俊司さんの3名は県民に尊敬される弁護士でありますが、一坪反戦地主の代表世話人でもあります。多くの県民から慕われる牧師である平良修さんも代表世話人であります。残るお1人の崎原盛秀さんは、長らく教職にいた尊敬される教育者であります。一フィート運動の会の事務局長中村文子先生も、元沖縄タイムス社長の豊平良顕さんや牧港篤三さんも一坪反戦地主であります。もっと多くの著名な方々や県民が一坪反戦地主であります。 一坪反戦地主や反戦地主は沖縄の良心そのものなのであります。(傍聴席にて拍手する者多し)
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20000109060130